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33話 哀願の絶叫と、冷酷に突きつけられた現実

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-10-18 06:00:42

「あぁ~あ……抜剣しちゃったね? 殺されても文句は言わないでね……って、死んだら文句は言えないか~。まあ殺しはしないけどね~」

 俺は大きくため息をついた。まるで目の前の状況が、くだらない茶番劇であるかのように。視線は、抜剣した盗賊たちを、ゴミを見るかのように冷ややかに見下ろしていた。

「貴様が一人で、こいつらに勝つつもりなのか? 頭は大丈夫なのか? 正気なのか? あははは……バカがっ!」

 貴族は腹を抱えて、下品な笑い声をあげた。その笑い声は、嘲りそのものだ。ミリアが心配なので、まともに戦うつもりはない。バリアを使った技がバレるのはまずいので、剣で腕や足を切り落とすつもりだ。俺は、腰に下げていた国王から贈られた剣を抜き放ち、その金属の冷たい光を月明かりに反射させた。

 だが、罪悪感や恐怖心はなかった。この世界で生きていくなら仕方がない。盗賊がいるし、町を出れば無法地帯で平気で剣を振るってくる。斬らなければこっちが斬られる世界だ。相手は盗賊をやってるのだから、同じようなこと、あるいはそれ以上のひどいことをやってきただろう。今回は、自分の番になったと思って罰を受けてもらう。彼らがこれまで奪ってきたものの報いを受けるのだ。俺の心は氷のように冷え切っていた。剣を握る手に迷いはなく、その一閃が彼らの運命を決することを理解していた。

♢瞬間の決着とバカ貴族の末路

 アイテムストレージから剣を取り出し、抜剣した。刀身が煌めき、周囲の空気を切り裂く。剣を振り抜くと同時に、不可視のバリアを発生させ、盗賊たちの腕や足を切り落とした。鈍い音と、男たちの断末魔の叫びが同時に響き渡る。血飛沫が宙を舞い、地面を赤く染めた。切り落とされた四肢が、不規則な動きを止め、路地にごろりと転がる。もちろん、バカ貴族も同様に両腕と両足を切り落とした。彼の顔から血の気が引き、脂汗が噴き出す。その瞳には、絶望の色が深く刻まれている。体は激痛と恐怖で痙攣していた。

「わぁ……っ……た、助けてくれ……頼む!命だけは助けてくれ!」

 貴族は地面に転がり、顔を歪ませて哀願した。その声は、恐怖に引きつり、ひどく情けない。唾液が泡立っている。血の臭いが、路地いっぱいに充満した。

「人を殺せと命じておいて、自分が不利になると助けてくれって……お前こそ頭は大丈夫なのか?まあ……殺すつもりはないけど、助けるつもりもないよ」

 俺は冷ややかに言い放った。その言葉には、一切の感情がこもっていない。剣の切っ先を貴族に向けたまま、俺は静かに立っていた。

「お、お前は何者なんだ?」

 貴族の目が、恐怖と混乱に揺れている。もはや、俺の存在が理解の範疇を超えているかのようだ。激しい痛みに耐えながら、彼は必死に俺の正体を探ろうとする。

「はぁ? 何も調べずに襲うって……ホントにバカ貴族なんだな……国王様から物を貰うって簡単に貰えるわけが無いだろ?何かをしたから貰えるのかって考えなかったの?例えば……モンスターの討伐とか盗賊の集団の討伐とか……さぁ」

 俺は呆れたように首を振った。バカ貴族は、腕と足を切り落とされて顔色が悪かったのが、さらに悪くなった。まるで土気色の顔だ。口を開けて、金魚のようにパクパクと呼吸をしている。その目には、後悔と絶望が入り混じった光が宿っていた。

 この世界では、抜剣した時点で殺されても文句は言えない。正当防衛だし、さらに俺は王族であり、ミリアの婚約者でもあるのだから問題ない。だが、生かして罰を受けてもらうのもいいだろう。この王国の法律で裁かれてもらうことにしようか。俺は、貴族と地面に転がる盗賊たちを一瞥し、静かに剣を鞘に収めた。

 助けるつもりはなかったが、アイテムストレージから治癒薬を取り出し、全員に振り掛けた。透明な液体が宙を舞い、傷口に触れると、男たちの悲鳴が収まる。完全治癒薬ではないので、切り落とされた手足が元に戻ることはない。戻す気もないけれど……。すると、大勢の兵士が駆けつけてきた。彼らは状況を瞬時に把握し、賊を包囲する。金属鎧の擦れる音と、地面を蹴る足音が、路地に響き渡った。

 はぁ……毎回、町の散策をすると問題が起きるな……。しかも全部が盗賊絡みじゃないか?治安悪すぎだろ。というか、貴族が盗賊を雇うってどうなのよ?領民を守るために盗賊を討伐する側が、盗賊を雇って資金を提供してどうするんだよ。

「後は任せたよ。一人も逃さないでよ。特に貴族だからって逃さないでよ?逃がしても、どこの貴族かバレバレだし。まあ手足が斬り落とされて逃げられないと思うけどね」

 俺は兵士たちに指示を出す。

「その様な事は致しません!」

 兵士のリーダーが、胸を張って力強く答えた。その声には、揺るぎない忠誠が込められている。彼は、一糸乱れぬ動きで部下に指示を出し、盗賊たちを拘束し始めた。

「あ~兵士の人に言ってるんじゃなくて、バカ貴族に忠告してるんだよ。この状況でも逃げられると思ってるっぽいから、バカだから」

 俺は貴族の方をちらりと見て、皮肉たっぷりに言った。貴族の顔が、さらに歪むのが見て取れる。

「クソっ!」

 貴族は地を這うような声で呻いた。その顔は絶望に染まっている。瞳の奥には、憎悪の炎が燃え盛っているかのようだ。

「痛みが消えたからって足が生えてくると思ってるの? 逃げられないよ」

 俺はさらに追い打ちをかける。

「うわっ。足がない! クソっ!! 許さないぞ! 俺は子爵家の息子だぞ! こんな事をしてただでは済まないぞっ!」

 貴族は、自分の惨状をようやく理解したのか、半狂乱になって叫んだ。その声は、激痛と恐怖が混じり合った、絶叫に近いものだった。

「そうなんだ? へぇー。俺は王族だけど?」

 俺は冷静に告げた。その言葉は、貴族の絶叫を打ち消すように、静かに響いた。

「は……? そんな事を信じられるか!? 騙されないぞ!!」

 貴族は、血走った目で俺を睨みつけた。その目には、現実を拒否するかのような強い否定の色が浮かんでいた。

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